地上デジタル放送への移行後、テレビは徐々に薄型化・大型化していった。普及するにつれ低価格化が進んでいるが、そうは言っても大型のテレビは高額であり、大事に長く使いたいと思うのは一般の家庭では当然であろう。

そして、大事に使っていくためには地震時の転倒が気になるところであるが、テレビの転倒防止対策はまだまだ十分ではないようである。

家具・家電などを固定し，転倒・落下・移動を防止している。40.7％

「防災に関する世論調査」の概要／平成２６年２月、内閣府政府広報室

そこでまず、薄型テレビの転倒防止対策が本当に効果があるのか、資料を紹介したい。

引用は、国民生活センターが平成２４年３月１５日に発表した「薄型テレビの転倒防止対策の重要性」からのものである。

薄型テレビの振動試験

震度５弱～６強に相当する地震波で加振し、加振中及び加振後のテレビ（32V・42V・50V型）の状態を調べた。

テレビの大きさや転倒防止対策の方法によって結果に多少の違いが見られたものの、いずれかの転倒防止対策を行うことで、転倒や落下を軽減することができた。

この言葉から、転倒防止対策をすれば確かに効果があることが確認できる。

転倒防止対策をしなかった場合

震度 5 弱相当ではテレビに大きな揺れは見られなかったが、震度5 強相当では大きな揺れが見られ、震度6 弱相当ではすべてのテレビが転倒し、テレビ台から落下した。

茨城県では、茨城県南部を震源とする地震が想定されており、茨城県南西部の32市町村で震度6弱以上の揺れが予測されている。（耐震診断のご案内／茨城県）

参考ページ（地図あり）：茨城県の地震対策サポートします

粘着マットを使用した場合

50V 型を除き震度6 強相当でも大きな揺れは見られなかった。
50V 型は震度6 弱相当までは大きな揺れは見られなかったが、震度6 強相当で転倒はしなかったもののスタンドとテレビ本体をつなぐ部品が折損した。

補助的な役割、軽量物向きの対策と思われがちだが、相当の効果があることが分かる。

テレビ台に固定した場合（木ねじによる）

震度 5 弱相当では大きな揺れは見られなかったものの、震度5 強相当から震度6 弱相当では大きな揺れが見られた。

50V 型は震度6弱相当で移動が見られたが後方への移動であり、危険性は小さいものと考えられた。

震度6 強相当では32V 型は大きな揺れが見られたが移動や転倒はなかった。42V 型はスタンドをテレビ台に固定していたネジが抜けたために転倒し落下した。50V 型はスタンドの首振り機構の回転軸が折損し、テレビ本体が前方に落下した。

震度6 強での結果は、テレビが大型になるほど重くなるため、支点にかかる荷重が大きくなったことを反映している。固定部が外れるようではいけないが、多少の遊び（ゆとり）があった方が力を逃がせるため、機器の損傷は防げるかもしれない。

壁に紐で固定した場合

震度 5 強相当で大きな揺れや移動が見られ、震度6 弱相当では42V型や50V 型に後方への転倒や落下が見られたが、前方に落下する危険性は見られなかった。

震度6 強相当では32V 型に移動が見られた。

テレビが壁のすぐ手前にあれば、後方への移動や落下は危険性が低いと考えられている。

前方に転倒・落下を防ぎやすい方法と思われるが、震度6 強相当での42V型・50V型の振動の検証はされていない。

販売されている器具には、紐ではなくゴムベルトや強粘着剤で衝撃を吸収するタイプがある。

振動試験の結果総論

対策がない場合は震度6 弱相当でどのテレビも前方へ転落したが、対策がある場合は同じ震度でも前方への落下がなく、また1 階級上の震度でも転倒しない場合があり、転倒防止対策はいずれもその効果が発揮された。

テスト結果を総合的に見ると、スタンドの固定に加え、テレビ本体も壁に紐等で固定することにより、より効果が上がると考えられる。

メーカーによっても商品性能に違いがあり、また改良もされている可能性もあり、この実験結果が全てを表している訳ではないが、おおよその傾向は見て取れる。

薄型テレビの転倒防止対策・器具には上記のような種類があり、それぞれに特徴（弱点）があるため、単一器具に頼るのはやや心もとない。

いくつかの器具を組み合わせることにより、弱点を補う方法を取ることがより安全・安心につながるだろう。

テレビ台の固定：補足

この実験の条件として、テレビ台は床に固定されている。

地震時には、テレビ台自体が移動しテレビの転倒につながる可能性があるので、テレビ台そのものも壁もしくは床に固定することが望ましい。

家具を固定する器具として、掃除などのために簡単に着脱できるものがある。