耐震基準(建築基準法)改正の歴史
地震列島とも呼ばれる日本では、幾多の大地震が起こってきました。そして耐震基準(建築基準法)はそれに応じて見直されてきました。
新耐震基準が目安
1981年(昭和56年)6月には大幅な耐震基準の改正があり、現在の「新耐震基準」が設定されました。木造住宅では「耐力壁」の壁倍率・壁量などが見直され、これ以前の住宅よりかなり耐震性能は向上しました。
中古住宅を購入する、または自宅を修繕する際は、この新耐震基準を満たした建物かどうかが、大きなポイントになります。
2000年(平成12年)の改正
1995年1月17日には阪神・淡路大震災が起こり、建築基準法では木造住宅の柱が基礎から引き抜かれるのを防止する「ホールダウン金物」などの接合部に使用する金物が規定されました。
また、耐力壁の配置バランスも重視されるようになりました。
その後も大震災が続く
そして、2011年3月11日には東日本大震災が起き、今年2016年には熊本地震が発生しました。
最近発表された「全国地震動予測地図2016年版(概要)」によると、今後30年間に震度6弱以上の大きな地震が発生する確率は、南関東を含む太平洋側で高くなっています。
建築基準法が求める耐震の程度
建築基準法で定める新耐震基準では、「中規模地震 (震度5強程度)ではほとんど損傷するおそれのないこと」「大規模地震(阪神・淡路大震災クラス、震度6強~7に達する程度)倒壊・崩壊するおそれのないこと」と規定されています。
しかしご承知の通り、震度6強~7の地震は起こり得ない地震では無くなっています。
全ての建物で、特に新耐震基準以前の建物では何らかの地震対策が必要です。
因みに住宅性能表示制度では、建築基準法のレベルが等級1、1.25倍の耐力なら等級2、1.5倍の耐力なら等級3とされています。
自分で自宅の耐震診断をしてみる
耐震性の向上を図る耐震改修に向けて行う専門的な耐震診断をする前に、簡易的ですが自分で自宅の耐震診断をする方法があります。
国土交通省が監修し日本建築防災協会が編集した「誰でもできるわが家の耐震診断」によるものです。pdfデータのダウンロードのほか、ネット上での診断もできます。
1・2階建ての戸建て木造住宅(在来軸組み工法・ツーバイフォー工法)が診断対象になっており、10項目の問診で判定するようになっています。
ぜひ一度、ご自身で耐震診断をなさってみてください。自宅の耐震性能の理解や耐震知識を深めることができます。
診断自体は当該サイトに委ねるとして、各問診とその意図するものをご紹介します。
1.建てたのはいつか?
前述のとおり、1981年(昭和56年)6月に大幅な耐震基準の改正があり、建築確認申請をしたのがこの時点の前か後かが、耐震性能の優劣を判断する大きな目安になります。
(参考)
もちろん2000年の建築基準法改正による「ホールダウン金物」などの接合金物の使用も重要です。
2.災害履歴はあるか?
その住宅が床上・床下浸水や火災、車の突入事故、大地震などに遭遇したことがあれば、そのダメージが残っている可能性があるということです。
損壊などをした経験があり修復が十分でなかった場合、大きな地震ではそこが弱点になることがあります。表面上見えないからと言って安心はできません。
3.増改築したことがあるか?
住宅の既存部分と増築部分の接続部分は、構造が同じでも全く同じ施工とはいかないので、弱点になりがちです。
4.劣化状況と補修・改修
長年住んでいれば、風雨や湿気・日常の使用により、住宅の老朽化していきます。
どうしても湿度が高くなりがちな建物の北側や水回りは、特に弱くなりがちです。
木材の腐食やシロアリ被害が疑われる場合、基礎や外壁のひびが現れた場合は、専門の調査および修繕が必要です。
一般的には中古住宅の購入前に行う「住宅診断(ホームインスペクション)」を利用し、自宅の劣化状態を知る方法もあります。
http://re.home-agent.net/inspection
5.建物の平面形は複雑か?
建物の形に凹凸が多いと、地震時に力のかかり方に偏りが出て、弱い部分が壊れがちです。
以下3つの項目にも関連します。
6.大きな吹抜けがあるか?
ひと昔前は玄関ホールに、最近ではリビングに吹抜けをつくるケースがあります。
そのスペースには2階の床が無いので、他の部分に比べ剛性が劣る可能性があります。
ここでは4m四方の大きさの吹抜けの有無が、判定基準となっています。
(参考)
1階部分に駐車場があるピロティ形式の建物も、吹抜けと同じ考え方で注意が必要です。
7.1階と2階の壁位置が一致しているか?
2階壁面の下に1階壁面が無い場合、2階からの地震時の荷重は素直に1階に伝わりません。
構造的な対策をしていないと、不自然な力のかかり方が起こり、悪い影響を及ぼすことがあります。
ただし、ツーバイフォー工法は床の耐力が大きいため、壁位置の不一致を考慮しなくても良いとされています。
8.壁はバランス良く配置されているか?
前述の新耐震基準及び2000年の建築基準法改正により、耐力壁(構造上有効な壁)の量とバランスが規定されています。
壁の配置が偏っていると、その弱い部分が壊れやすくなります。
9.屋根材種と壁の量は?
日本住宅では屋根葺き材料として従来より瓦が多く使われてきました。瓦は重いのでその分、屋根を支える下の建物(特に1階)の耐力が重要です。
スレート・コロニアルやアスファルトシングル葺き、金属板葺き(銅板・ガルバリウム鋼板)の場合は比較的軽いので、壁の量もそれなりにすることができます。
10.基礎形状は?
近年の住宅の基礎は、ほとんどが鉄筋コンクリートを建物下部全体に打つ「ベタ基礎」です。
地盤がしっかりしていれば基礎として十分とされています。
また、以前の住宅の基礎は、主な壁の下部のみ施工する「布基礎」が一般的でした。
ここでは鉄筋コンクリート造以外の布基礎、およびその他の基礎では不十分と評価されています。
専門的な判断は専門家に依頼する
以上が簡易耐震診断の項目ですが、各項目および総合判定で評価が良くなくても、即危険な建物という訳ではありません。
十分な補強対策・補修・修繕がされていれば大丈夫だからです。
あくまで簡易的な耐震診断であり、目安として捉えて下さい。